椿 忠雄先生を偲んで

In memory of Dr. Tadao Tsubaki.

　秋も酣な10月20日，椿　忠雄先生は急に逝かれました。先生の訃報は神経学の損失というよりも，私にとっては心の中からなにかが抜けていくような淋しいできごとでありました。昭和35年以来，先生とともに学んだ年月を回想しながらこの追悼文を書かせていただきます。

　先生はたやすく胸襟をひらかれる方ではありませんでしたが，青年への愛ともいうべきお気持ちが滲んだ方であられました。先生の周囲には多くの人々が集まりましたが，その誰もが自分こそ先生に可愛がられていると感じ，先生に見ていただいていると思いながら，ますます努力したものでした。