書評
—K.W. Walsh 著,椿 忠雄(東京都神経病院院長) 監訳,相馬 芳明(東京都神経科学総合研究所) 訳—神経心理学—臨床的アプローチ
杉下 守弘
1
1東京都神経科学総合研究所
pp.1064
発行日 1983年11月1日
Published Date 1983/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205211
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ウォルシュの著した本部は,神経心理学の入門書である。神経心理学は脳と心の関連を扱う領域で,失語,失行,失認など,大脳損傷で生ずる高次脳機能障害の研究や,正常人を対象とした左右半球機能の研究を含んでいる。神経心理学は19世紀後半以来の長い伝統を持っているが,過去20年間に飛躍的点発展をとげた。その要因のひとつは,分離脳の研究による大脳局在論の確立である。19世紀後半以来,神経心理学は失語,失行,失認などの症状が大脳のどの部分の破壊で生ずるか,すなわち症状の大脳局在を決定することに努めてきた。そして,症状の大脳局在から,その大脳部分がどのよう点機能を営んでいるか,す点わち機能の大脳局在を確定しようとしてきた。しかし,症状の局在は,かならずしも機能の局在と同じでは点いという批判が従来,大脳局在論の前に立ちはだかってきた。
ところが,1960年代初y)に」重症てんかんの治療のため,左上大脳半球を連絡する脳梁点どがり」断された患K−一分離脳患揖一の1り1究がはじまった。そして左半球は、言語機能が優れており,上半球は1乍「有的,映像的課題の遂有においてわずかではあるが優れていることが明らかにされた。このことはん上の半∫求という大き点単位についてではあるが,はじy)て真の意味での大脳局在論を僧1手立したのである。
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