書評
—佐野圭司(帝京大学教授・東京大学名誉教授)—脳腫瘍—その病理と臨床 改訂第2版
高倉 公朋
1
1東京大学
pp.656
発行日 1981年7月1日
Published Date 1981/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204785
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佐野圭司東京大学名誉教授(現帝京大学医学部教授)が執筆された「脳腫瘍—その病理と臨床—」は,昭和47年の初版以来,わが国でもつとも広く読まれている脳腫瘍のガイドブックである。本書は佐野教授が東京大学に在職された35年間,特に主任教授として勤められた後半18年間に集積された約4,000例の脳腫瘍の集大成である。写真と図が豊富に挿入されていて,記述は簡潔,明快である。脳腫瘍で,ことに理解が困難な病理組織像が多数の術中カラー写真と共に紹介されており,読者は容易に脳腫瘍全般の知識を身につけることができるであろう。医学生,実地医家はもとより,脳神経外科の専門医を志す若い医師にとつて,脳腫瘍の適切な入門書といえよう。
本書の第1版出版後,8年間の間には脳腫瘍の診断と治療面で大きな進歩があつた。CTの開発はその中でももつとも大きなできごとである。今回の改訂版には,脳腫瘍のCT像に関する概説が加わり,治療面では新しい方向づけとして,下垂体腺腫に対する今日一般化した経蝶骨洞手術の方法や,悪性脳腫瘍の化学放射線治療なども書き加えられて,up to dateに改編されている。佐野教授が永年研究開発されたstationary potential encephalogra—phyの記載があるのも,本書の一つのユニークな個所である。
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