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特集 重症筋無力症—臨床と病因
重症筋無力症の治療—病態生理からみた各種治療法の評価と治療の実際
Treatment of myasthenia gravls: Pathophysiological evaluation of various forms of treatment and practical aspects of therapy.
伊藤 直樹
1
Naoki Ito
1
1千葉大学医学部脳機能研究施設神経内科
1Department of Neurology, Brain Research Institute, Chiba University
pp.921-929
発行日 1980年9月1日
Published Date 1980/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204641
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重症筋無力症(MG)とは,骨格筋の神経筋接合部の障害によりおこる筋力低下と易疲労性を主徴とする疾患である。現在明らかにされている病態生理は,神経筋接合部後膜のアセチルコリン(ACh)受容体に,自己免疫過程で形成された抗体が結合したり16),抗体の存在により受容体の崩解が促進されたり32),さらに免疫複合体により受容体が破壊されたりして16),機能的ACh受容体の数が減少することである。このことはさらに動物実験モデルによつても確かめられている63)。このようにMGの発症に抗ACh受容体抗体が重要な役割を演じていることはほとんど疑いの余地はない。抗ACh受容体抗体は主としてIgGであり,患者の血清中にも認められ,抗体価の測定は診断確定や治療効果の判定に役立つ。
一方,胸腺過形成がMGの60〜70%にみられ,正常には存在しない胚中心の増殖が特徴的所見で,B細胞と形質細胞から成立つている。また15%に胸腺腫がみられる。甲状腺機能亢進症,橋本甲状腺炎,リウマチ様関節炎などの,自己免疫が関与している疾患がしばしば合併すること,胸腺の上皮細胞あるいはmyoid cellにACh受容体が存在すること17,31),胸腺リンパ球が抗ACh受容体抗体を産生すること74)などから自己免疫過程の成立と維持に胸腺が関与し,しかも胸腺のACh受容体に抗原性の変化がまず生ずることが推定されている76)。
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