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特集 重症筋無力症—臨床と病因
重症筋無力症における胸腺の役割—重症筋無力症の病因・病態
Pathogenesis and pathophysiology of myasthenia gravis : The role of thymus in myasthenia gravis.
大島 扶美
1
Fumi Ohshima
1
1山形大学医学部整形外科
1Department Of Orthopaedics, Faculty of Medicine, Yamagata University
pp.909-919
発行日 1980年9月1日
Published Date 1980/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204640
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はじめに
ニコチン性アセチルコリン受容体(以下AChRと略)とのみ特異的に結合する蛇毒の発見10)を契機に,重症筋無力症(以下MGと略)の病態研究は飛躍的に発展し,MGは,自己免疫性受容体疾患であることが浮彫りにされてきた12,75,81)。しかし,なぜ,自己の骨格筋のAChRに向けて抗体が産生されるのかというMGの病因の根本問題は謎に包まれたままである。
MGには高率に胸腺腫や胚中心増生を伴つた肥大胸腺が合併し9),患者血清中には,抗AChR抗体および抗筋抗体のみならず抗胸腺上皮細胞抗体が見出されており88),胸腺摘出術(以下胸摘と略)がMG症状を軽快させるという事実などから,胸腺がこの自己抗体産生に関与する重要な役割を演じている可能性が推測されてきた。他の自己免疫疾患でも胸腺に胚中心が高率に認められており82),胸腺が免疫細胞分化の主要なセンターであることが解明されるのに伴つて,その役割の重大さがクローズアップされてきている7)。しかし胸腺腫が合併する自己免疫疾患では,MGが圧倒的に多く70,93),前述の特性などから,MGではより密接に,かつ他の自己免疫疾患とは異なる機序で胸腺が関与している可能性が考えられる。
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