書評
—三好 功峰(兵庫医科大学教授)・松岡 龍典(元京都大学助教授)—神経疾患と精神症状—脳器質性精神疾患
白木 博次
1
1白木神経病理学研究所
pp.908
発行日 1980年9月1日
Published Date 1980/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204639
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筆者はかつて,「現代精神医学大系,19巻A,中山書店,1978」のなかで,「神経病理学の存在意義」について執筆したことがあるが,この論文の冒頭,筆者は次のように述べた。「神経病理学は,一般病理学の宿命がそうであるように,二つの研究方向の主流がそのバランスを失つた場合,表面的にはいかに華やかな実績があがつているかにみえても,終局的には衰退の道をたどらざるをえないと考える。その主流の一つはetiopathogenesisの解明であり,他は臨床・病理の相関性の確立である。言葉をかえると,神経病理学は神経系についての基礎医学と臨床医学のいわば中間帯に位置し,両医学の橋渡しに貢献できる神経科学としては,最も重要な役割を演じてきたし,また,今後も演じて欲しい学問領野といえる。
ここに,三好また故松岡両先生の共著になる本書によつて,臨床病理の相関性という重要課題について,日本はもとより,諸外国においても,あえて初めてといつても決して過言ではない金字塔が打建てられた。ここに筆者の従来の切なる念願が,漸く実現の第一歩を踏みだしたことは,誠に喜ばしい限りである。両先生は,何よりもまず勝れた精神医学の臨床医であり,同時に卓抜した臨床神経病理学者でもあり,またあつた方々である。
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