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特集 第9回脳のシンポジウム
主題:神経免疫疾患
重症筋無力症における胸腺の役割に関する実験的研究
Experimental studies of the role of the thymus in myasthenia gravis
森 良一
1
,
川浪 祥子
1,2
Ryoichi MORI
1
,
Sachiko KAWANAMI
1,2
1九州大学医学部細菌学教室
2九州大学医学部脳神経病研究施設神経内科
1Department of Bacteriology, School of Medicine, Kyushu University
2Department of Neurology, Neurological Institute, School of Medicine, Kyushu University
pp.1022-1025
発行日 1973年12月10日
Published Date 1973/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903563
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Ⅰ.いとぐち
中枢リンパ系器官としての胸腺の重要な役割の一つは,1961年のMillerによる新生時胸腺摘出の報告以来明らかにされてきたように,胸腺依存性リンパ球(T細胞)の供給にある。胸腺のこの機能に関する研究を中心に,近年の免疫生物学の進歩は展開してきたと言っても過言ではない。一方,胸腺は免疫における恒常性維持の中枢としての役割を果たしていると考えられるが,その詳細な機序については仮説の域を出ない。重症筋無力症(以下MGと省略する)の場合,約80%に胸腺腫や胸腺の過形成を伴う胸腺の異常が見出されると報告されているが,MG患者の胸腺の異常がどのような意義をもつかは最近に至るまで明らかでなかった。MGが免疫,とくに自己免疫と関連をもつか否かについても明らかでなかったと考えてよい。
MG患者の血清中には(しかしながら正常人の血清中にも)横紋筋の横紋と反応するmyoid antibodyが見出される.一方,古くから知られていたように,胸腺にはmyoid cellとよばれる細胞が存在する。この両者を結びつけて,myoid antibodyが胸腺の異常とMGの発生病理になんらかの役割を果たすという考えが浮かぶが,myoid antibodyの具体的なはたらきについては説明がなされていない。
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