Japanese
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特集 神経系先天代謝異常症の症候
先天性代謝異常症における網膜異常
Retinal involvement in hereditary neurometabolic disorders.
桜川 真智子
1
Machiko Sakuragawa
1
1新潟大学医学部眼科学教室
1Department of Ophthalmology, Niigata University School of Medicine
pp.471-485
発行日 1979年5月1日
Published Date 1979/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204409
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I.はじめに
眼は,全身病や神経疾患の窓であり,とくに神経疾患における眼症状は,眼科医にとつても興味深い分野の一つである。しかし,多くの神経疾患の診断において,眼科医と神経科医の日常的協力が確立されているなかで,神経系先天代謝異常症の臨床症状による鑑別診断に際し,眼科医が重要な役割を果たすことができるという事実はあまり知られていない。
眼および眼付属器の各組織は,その発生学的特性により,すべての部位が先天代謝異常における蓄積産物,あるいは特異的病変の発現の場となりうる。粘膜の病変は結膜に現われ,強膜はalcaptonuriaにおいて色素沈着をきたす。角膜はmucopolysaccharidosesを含む結合織病変の主体となり,更にcystinosisにおけるcystin結晶,あるいはWilson’s diseaseの銅沈着の場となる。水晶体病変のうち白内障は糖代謝異常に関与し,homo—cystinuriaでは水晶体の偏位脱臼をきたす。硝子体の混濁はfamilial amyloidosisにみられ,さらにsphingo—lipidosesをはじめとする脂質代謝異常には,網膜異常および視神経萎縮を認めることが多い。綱膜は中枢神経系の一部であり,直接にしかも検眼鏡により拡大観察できるため,神経細胞やグリヤ細胞代謝における異常蓄積産物に対して多くの重要な情報を与えうるものである。今回は,この網膜異常に焦点を合わせ検討する。
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