総説
先天性代謝異常症
荒川 雅男
1
,
吉田 稔男
1
1東北大小児科
pp.1401-1407
発行日 1971年12月15日
Published Date 1971/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907454
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はじめに
今世紀初頭の1908年,Sir Archibald Garrodは,遺伝性疾患に対して1つの概念を発表した.それによるとすべての遺伝性疾患は,ある特殊な‘酵素(enzyme)’の異常による代謝障害によってひき起こされるものと考えた.当時この考えは人人に注目されなかったが,分子生物学のめざましい発展とともに,‘先天性代謝異常症(inborn errors of metabolism)’の概念のもとに脚光をあびるようになった.
現在この概念は,酵素に限らずすべてのタンパクにも適用することができるが,彼は最初に次の4つの疾患をあげて説明している.それはアルカプトン尿症(alkaptonuria),白皮症(albinism)五単糖尿症(pentosuria),シスチン尿症(cystinuria)であり,現在はBeadle(1945年)の‘一遺伝子・一酵素説(one gene-one enzyme theory)’により説明が可能である.すなわち先天的な1つの遺伝子の異常が1つの酵素またはタンパクの異常をきたし,そのためにある疾患が発症するという考え方である.これは病気の原因を代謝レベルで解明しようとする,現代の医学の新しい方向をうみ出した最初の仕事として高く評価されている.
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