Japanese
English
総説
先天性代謝異常
Inborn Errors of Metabolism
鈴木 義之
1
Yoshiyuki Suzuki
1
1東京大学医学部小児科
1Department of Pediatrics,Faculty of Medicine,The University of Tokyo
pp.363-376
発行日 1978年4月1日
Published Date 1978/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204225
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I.先天性代謝異常の概念
先天性代謝異常とは,なんらかの原因によって生じた遺伝子異常の結果としての蛋白合成障害が,生体内における代謝過程の異常をひきおこした状態であり,遺伝性,家族性に病気が発生するという特徴をもつ。
1908年Garrod1)はアルカプトン尿症患者尿に,大量のホモゲンチジン酸の排泄を見出し,家族内発症はあるが両親は正常であり,しかもその両親には血族結婚が多いことに気づいた。さらに白皮症,シスチン尿症,五炭糖尿症などにおける同様の経験から,この種の病気はある代謝過程における酵素活性が先天性に低下或いは欠如していることが原因であろうと予想し,inborn errors ofmetabolismと呼んだ,この考え方はその後長く無視されていたが,Beadle及びTatumのショウジョゥバエによる実験からたてられたone gene—one−enzyrne説2,3)により,更に具体的な形をとるに到つた。つまり1つの遺伝子は1つの酵素活性(酵素蛋白の合成)を規定するという説であり,多少の修正はなされたものの,今日でも先天性代謝異常の根本的な考え方であることに変りはない。
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