書評
—J. T. Jabbour, D. A. Duenas, R. C. Gilmartin, Jr. M. I. Gottlieb 著 鈴木 昌樹(東京大学助教授) 監訳—小児神経学ハンドブック
竹下 研三
pp.1182
発行日 1978年11月1日
Published Date 1978/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204329
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故鈴木昌樹先生を中心とした東大小児科神経グループの人々による翻訳書である。訳序に最終責任は監訳者である自分にあると述べてあるとおり,訳の統一に相当の努力がされてある。多数の分担訳になると訳者の個性がどうしてもにじみでて,全体の統一を妨げ,読みづらくするものであるが,これが見事に統一されていることに,まず何よりも敬意を表したい。適確な訳の上に全体を流れる柔かさは読んでいて,鈴木先生の温厚なイメージと重なつてすばらしい訳書となつている。
このハンドブックはテネシー大学のJabbour教授とその一門の小児神経グループの人々による共同執筆である。ハンドブックといえば知識のまとめといつた,内容の乾燥した本になりがちであるが,この本は表現の大胆さ,簡潔さだけでなく,より深い知識を新しい小児神経学の発展にそつてまとめ,かつ具体的であり,写真・図表の豊富さと相まつて,小児神経病学のすばらしい解説書となつている。著者の序に述べてあるとおり,小児科医を相当意識して書かれているため,治療の項にはその具体性が如何なく発揮されている。さらに,疾病の病態生理を意識した記述はこの本の内容を大変深くしている。
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