連載 判例にみるジェンダー・2
大学院生に対する助教授のセクハラ
石井 トク
1
1岩手県立大学看護学部
pp.178-179
発行日 2001年2月25日
Published Date 2001/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902593
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セクシャル・ハラスメント
セクシャル・ハラスメントとは,略称「セクハラ」ともいい,日本語では「性的な嫌がらせ」と訳されている。1960年代後半,米国では雇用上の性差別問題などが一つの契機になって女性解放運動が活発になり,セクハラは,「公民権法第7編703条」の違反とされるようになった。わが国では,やっと1999年4月1日施行の「改正男女雇用機会均等法」に採用,配置,昇進における男女差別の禁止と共に事業主にはセクハラ防止配慮義務が課せられるようになった。セクハラは大別すると,女性が望まない性的言語を拒絶した場合,上司等が立場を利用して解雇,降格,減給,または配置転換の不利益を与える対価型と,女性が労働意欲を失うような女性蔑視の環境型がある。言うまでもなく,職場で男性が女性に性的行為を要求するとか,望まないにもかかわらず性的な接近をするとか,性的なからかい,冗談も女性が耐え難い苦痛と感じればセクハラである。
セクハラは,企業においてばかりでなく,わが国では古くから大学や大学院で指導教官が自らの地位を利用して,特定の学生や院生を罵倒,嫌がらせを繰り返すだけではなく,学位を与えないなどの,いわゆる「アカデミック・ハラスメント(アカハラ)」があり,それによって学生や院生が情緒不安定,自信喪失から精神的破綻に陥ることが少なからずある。大学という「閉鎖社会」での支配主従関係の乱用による教官と学生に関する事件は,教官の奢りによる「アカハラ」であり,社会的罪悪である人格的嫌がらせであり,法的には人格権の侵害に相当する。
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