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編集後記
萬年 甫
pp.114
発行日 1976年1月1日
Published Date 1976/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203836
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- 文献概要
本誌も28巻目に入り,その第1号をお届けすることになつた。欧米の歴史の長い雑誌に比べれば,いかにも若いが,それはそれで日本の神経学の若さをむしろ誇りにして精進を重ねるべきであろう。先日新聞紙上で,さる知日外人が「日本は物質的に欧米なみに発達したから,以前のように,外国人に負けぬよう努力しなければならない,という精神が劣つたでしよう。劣つたはずです」「だけど,物が不足したとか,がんばらなければならない時には,日本人らしい努力が見えてくると思うんです」と述べているのを読んだ。少くとも医学研究に限つた場合,物質的に欧米なみになつたという保証はさらさらないが,基礎部門を志ざす若者が減つているという意味では,外国人に負けぬよう努力しなければならないという精神が劣つたという批判は,案外あたつていよう。そして物価の上昇が研究費の相対的減少を招いている今,絶対人まねをせぬようおのれをつくして仕事にはげむことにより,さきざき「日本人らしい努力」の結果がでてくるようにしたいものである。
日本人らしいといえば日本人の勤勉はただ本能的に働くだけという意味で「蜜蜂の勤勉さ」と揶揄されたりしているが,はつきりした目標があれば勤勉はむしろ誇るべき美徳であり,とぼしい資源,狭い国土で民族として生きのこるにはそれにすがる他はあるまいと思う。
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