症候群・徴候・52
カーテン徴候
平山 恵造
1
1順大脳神経内科
pp.103
発行日 1976年1月1日
Published Date 1976/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203834
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咽頭筋の一側性の麻痺に際してみられる現象である。一側性の咽頭麻痺では,休息した状態での咽頭後壁を観察しても,特別なことはみられない(軟口蓋弓の変形のみられることはある)。口を十分に開け,舌圧子で舌を圧下して,嘔吐反射をひき起こさせるか,あるいは「ア」または「エ」の発音をさせると,咽頭後壁は患側から健側に向つて引かれ,再び元に戻る。この咽頭後壁の動きがカーテンのそれに似ているところからカーテン微候Signe de rideauといわれる。
咽頭後壁の動きは,水平というよりは,やや斜め上で,「ア」の発音とともに引かれ,発音が止むと元の位置に復するが,この復元するときの動きもよくみられて(むしろこの方がわかり易いものもあり),観察上大切である。これらの現象をよくみるためには,嘔吐反射を起こさせる方法よりは,発音させる方がよく,それも「エ」よりは「ア」の方が無理がなくてよい。しかも,「ア」の発音は長くひきのばした「アーーー」の発音より,短い方が動きがわかり易い。長い発音では,恐らく健側咽頭筋の疲労のためか,復元する動きが目立たなくなるものがあり,認めにくくなるのであろう。また起きた姿勢の方が見やすく,寝た位置では認めにくくなる。
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