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編集後記
有馬 正高
pp.551
発行日 1975年5月1日
Published Date 1975/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203715
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- 文献概要
日本医学会総会も終了し大学においては新学期を迎え学生の教育がはじまる。学生教育のプランとその実施の負担は特に臨床教室ではかなり過重なものとなつている。しかし,次代の担い手に対し,現在の医学的水準で可能な限界と未来への発展のための展望を伝えることは医育機関にあるものの責任であろう。目まぐるしく展開されていく新たな知見を消化し,選択し,基礎的な既に確立された事実の上に積み重ねて伝えていくことは容易なことではない。知識や経験の相互交換の場として,研究会や学術誌があるから,それに絶えず配慮を払うことは勿論であるが,自分自身の体験の反省もかけがえのない教訓となろう。
本号においては,基礎的な研究の現状として,脳血管の神経支配の問題がとり上げられた。脳内血流の調節に神経支配の果す役割については未解決の点が多いが形態面からの研究が新たな技術を用いて進められている。将来の展望への参考になる総説と考えられる。水川らの脳浮腫における神経細胞,毛細血管の電顕的所見とも関連があろう。渡辺らのくも膜下出血後のくも膜絨毛の電顕的検索も,出血後の水頭症発生の機序の解明に参考となり,本号は形態的研究に関する有意義な号になつた。
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