--------------------
編集後記
有馬 正高
pp.1097
発行日 1986年11月1日
Published Date 1986/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205813
- 有料閲覧
- 文献概要
永年にわたり本誌の編集委員をつとめてこられた大橋博司先生が逝去された。つい先日まで一緒に編集会議に出席していただき,かざらぬユーモアで座の雰囲気を楽しいものにしていただいたことを想い信じられないような気持である。先生は,若くして上梓した名著「失語・失行・失認」にうかがえるように,人間の大脳機能に関する知見を多くの臨床家にとって身近なものにした先覚者であった。高次脳機能に関する基礎,臨床の近年における目覚しい発展は21世紀に向けての脳研究について大きな期待をいだかせるものであるが,大橋先生もその前途を見守っていかれることであろう。心から御冥福をお祈り申し上げたい。
老化の問題が世間の関心を集め,そのなかでもとりわけ脳の老化にともなう高次脳機能の退行の生物学的背景が研究対象として注目されている。本号においてもそれに関連の深い論文が採択されている。発生発達の過程で築き上げられる脳のもろもろの形態と機能が,小児期,青年期の体験を通じて社会生活に適応するように情報を組み込み,老化とともに再び,一面において乳幼児に似たような回帰現象を示す。もとより,老人は小児そのものではなく,未熟と退行喪失の過程のパターンには多くの差異がある。
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.