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Fabry病は.1898年皮膚科医のFabryが,皮膚の血管腫、眼瞼浮腫及び蛋白尿のある患者を記載し,その後1915年に"Angiokeratoma corporis diffusum"という一つの疾患単位としてまとめたものである1)。神経症状としては,いわゆる自律紳経症状と考えられる,頭痛,四肢疼痛,無汗症、尿崩症などが中心でありとくに四肢末梢に強い激痛発作は,患者を最も悩ます症状の一つである、剖検所見からは,全身の血管壁に脂質の沈着が認められ,1963年には,Sweelyら2)により患者腎に蓄積した脂質はceramide trihexoside (CTH)及びcerami—de digalactoside (CDG)であることが明らかにされた(第1図)。ごく最近Kint3)によりCTH, CDGの末端のグリコシド結合を切る,α-galactosidaseの活性が本症で極端に低下していることが報告され,本症が先天性糖脂質代謝異常であることが確立した。
臨床症状として次の諸点を挙げることができる。①皮疹−7〜16歳ごろから臍周囲に出現し,対称性,散在性に膝と臍の間に拡がるものであり,鮮紅色あるいは暗赤色の紅斑ないしは丘疹状を呈する。②眼症状−1つは眼球結膜及び網膜のTelangiectasiaであり,他の角膜表層の渦状混濁である。特に後者は本症に特有な症状と考えられており,発病者の90%に見られるという。③腎症状—本疾患の死因となる症状であり,20歳前後より蛋白尿,尿沈渣に赤血球,白血球の他方第2図に示す如き脂肪細胞が出現。腎機能は漸次低下,多くは30〜40歳で尿毒症で死亡するに到るものである。この腎症状は,腎糸球体上皮の他,尿細管上皮,腎血管壁に糖脂質が異常に蓄積したために生ずるものである。④無汗症—幼小時より発汗が少ないことが名いが,汗腺は形態的に異常を認められていないので,交感神経障害によると考えられている。⑤収復性下痢—高頻度に出現するとされており,myenteric plexus神経細胞に脂質が沈着するために起こるとされている。⑥疼痛—四肢末端,手指,足趾に激痛発作をきたすことが本症の1つの特徴とされている。この発作は激烈かつ治療抵抗性であるが,最近car—bamazepineが有効であつた例の報告がある。第3図にみる如く,脊髄神経節細胞に強い病変が認められるところから考えると,この疼痛は知覚神経細胞レベルの障害が関与している可能性がある。⑦遺伝形式—本症は,原則として男子のみに発症し,伴性劣性遺伝(X-linked)するものとされている。
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