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〔1〜4〕座長:松本圭蔵 助教授【1】L-dopa投与後の血漿及び脳内dopa,dopa—mine esponseに対するpyridoxine及びdecarboxylase inhibitorの効果について
パーキンソニズムのL-dopa療法において,dopaの脳内移行率を高めるという意味で,末梢性脱炭酸酵素抑制剤(Decarboxylase Inhibitor;DCI)の併用が最近試みられている。また一方pyridoxine (Vitamin B6)はL-dopa投与後のdopa-responseを抑制ないし消失させるが,DCIとの併用により,pyridoxineの末梢での逆作用をblockし,しかも脳内でのDC活性を上昇させることが理論上期待される。今回はL-dopa投与後のイヌの血漿及びマヌス脳内におけるdopa及びDopa—mine (DA) responseに対するDCI及びpyridoxineの影響について検討した。L-dopa投与後の末梢dopa responseはDCIでの前処置により著明に増大した。しかもDCIの効果は,L-dopa経口投与の場合の方が静脈投与の場合よりも一層著明であつた。またマヌスの腹腔内及び経口的L-dopa投与後の脳内dopa及びDA濃度もDCIでの前処置により著明に増大し,前処置後のL-dopa 100mg/kg経口投与は500mg/kg単独投与の場合と同程度の脳内dopa濃度の上昇を示した。しかしこの場合,DAの上昇はdopa程著明でなく従つてDA/Dopa比は,L-dopa単独投与の場合よりも低下した。一方pyridoxineの1回および連続投与により,血漿dopa responseは明らから抑制をうけたが,この抑制はDCIの併用により容易にblockされた。またpyridoxineは脳内dopa濃度が高い時にはDA/Dopa比を有意に上昇させた。以上の結果より①DCIは主に腸肝におけるDCの抑制により末梢中のdopa濃度を上昇させる②pyridoxine投与による末梢dopa DC活性の上昇はDCIの併用により容易にblockされる③pyridoxineは脳内DC活性の相対的あるいは絶対的低下のある場合には,これを上昇させることが推定された。このことよりパーキンソニズムのL−dopa療法においては,脳内DA濃度を上昇させるという意味で,DCI及びpyridoxineとの3者併用が効果的であり,特にL-dopaの大量または長期投与の場合にはpyrido-xineの補足的投与が大切であると考えられる。
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