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緒言
末端肥大症acromegaly,巨人症gigantismが,下垂体前葉のeosinophilic cellから過剰に分泌される成長ホルモン(Human Growth Hormon,以下H.G.H.と略す。)によることは古くから知られており,時にX—線診断上,トルコ鞍拡大のないものに起こりうる。この疾患に対する治療は,Co60やベータートロンその他による通常の外部照射では効果なく,又通常の下垂体腺腫に対する視神経への圧迫除去を目的とした被膜内掻破減圧手術では成長ホルモン分泌状態に殆ど変化を来さないことも経験上知られてきた。これらの治療法に対する評価は,最近のHGHのradioimmunoasseyによる測定法が普及するにつれて,急速にひろまつて来たように思われる。従来,この疾患に対する有効な治療手段として,大きく分けて二つの方向があつた。即ち,一つは手術的下垂体切除,もう一つは,heavy particle (pro—ton beam等)のトルコ鞍への集中照射や,同位元素,yttrium−90を下垂体に埋没照射するか,又はstereota—xicに経鼻的にprobeを挿入して,熱又は凍結によつて下垂体をほぼ完全に破壊せんとする試みである。
一方,Cushingに始まり,Hirschにより発展した下垂体腺腫に対するtranssphenoidal operationは,Ha—rdyに至つて,レントゲンテレビと,手術用顕微鏡のcontrolの下に行ない,下垂体剔除,前葉分離切除,時に腺腫部分のみの選択的剔除をも可能な場合があるとされる程,精細,適確な操作が可能となりつつある。我々は過去約5年間,下垂体腺腫に対しては,症例によつてtransfrontal法と,transsphenoidal法とを使い分けて来たが,acromegalyを伴う下垂体腺腫例はすべてtra—nssphenoidal法の適応となつた。その理由は後述する。尚,我々のseriesの初期には,Hirsch法と外部照射を,それ以後はHardy法によつて腫瘍剔除乃至は前葉切除を目標とした。天理病院脳神経科に於て約5年間に経験された7例のgigantism又はacromegalyの症例について,HGHを始めとする内分泌学的検査データーを中心に報告する。
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