Japanese
English
神経疾患アトラス3
ウイルソン病
Wilson's Disease
有馬 正高
1
Masataka Arima
1
1鳥取大学医学部脳神経小児科
1Section of Child Neurology, Tottori University School of Medicine
pp.859-863
発行日 1973年7月1日
Published Date 1973/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203343
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
1.生化学
ウィルソン病は,常染色体性劣性遺伝による先天性代謝異常症と考えられている。本症の本態は現在のところまだ確実には明らかにされていないが,臓器への銅の蓄積がtoxicに働いていることは疑う余地がない。銅の蓄積を予防することにより,かなり進行している場合は別として,病像の進展は防止され,軽快ないし一見全治したかのように見える例も少なくないからである。
生化学的には,血中のグロブリン銅(セルロプラスミン)の合成障害と低値,不安定なアルブミン結合銅の増加,肝,神経,角膜などの組織の銅含量の増加が主要所見である。腸管から吸収された銅は正常人においては肝に多くとりこまれ,そこで,セルロプラスミンが合成されるが,本症においては肝への放射性銅のとり込みが少なく,肝の銅含量の多いことと一見矛盾したような知見がえられている。肝において,既に銅が飽和していることや,肝硬変によるプールの減少という二次的な影響が推定される。肝にとり込まれない銅の多くは腎に集まり,尿中に排泄されるので,進行した本症においては尿中の銅排泄量が多い。
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.