神経組織化学アトラス8〈臨床編(2)〉
脳脂質蓄積症
藤沢 浩四郎
1
1東京大学医学部付属脳研究施設病理部
pp.1082-1087
発行日 1968年11月1日
Published Date 1968/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202456
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Cerebral (sphingo—) lipidosesとは,特有の臨床症状を呈する他に,組織学的にいわゆる「黒内障性変化」と呼ばれる特異的な神経細胞病変を主体とする一連の重篤な変化を示し,組織化学的に神経実質細胞内に脂質(sphingolipids)の蓄積が証明される一群の疾患の総称であるが,蓄積する脂質のちがいから次のごとき疾患型に分類することが常套とされてきた。すなわち,黒内障性白痴(gangliosides), Pfaundler-Hurler病(Gargoylism;gangliosidesおよびacid mucopolysaccharides), Niemann-Pick病(sphingomyelin)およびGaucher病(cere—brosides)などである。
かかる分類とその基礎的概念とは現在でもまつたく妥当性を失つたわけではないが,症例の集積と化学的分析技術の進歩と相俟つて,従来のcerebral lipidosesの考え方は単純化し過ぎたあるいは類型化し過ぎた欠点のあることが次第に明らかになつてきた。その詳細は略するとして,種々の「異型」,「亜型」,「移行型」の存在が数多く見出され,すくなくともその中のあるものはそれ自体独立した疾患単位であり得る可能性が出てきたし,一方同じく黒内障性白痴とされている疾患でも,その幼児型と若年一成人型とは異なる疾患であるとする見解も最近有力である。このようにcerebral lipidosesに新しい重要な知見を提供したものは,主として脳脂質化学分析であり,この方法により各疾患型の脂質構成パターンの特徴がかなり明確に区別されるようになつた。
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