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はじめに
1955年Greenfield1)は彼のパーキンソン氏病に関する病理学的研究の総説の中に"解剖学的,病理学的研究ではこの疾患の原因は解明できない。その解決は酵素化学あるいはそのほかの新しい研究分野によるであろう"と結んでいる。事実パーキンソン症候群の中からウィルソン氏病が遺伝学的,生化学的方法によつて抽出された。しかし1817年にJames Parkinsonが一つの疾患単位として確立させたこの比較的ありふれた疾患では黒質,淡蒼球,新線状体の変性が常にみられ,そのほかに視床下部,視床,不確帯,Forel H野,ルイス体,無名質,乳頭体,脳橋,オリーブ核などの基底核を中心とした部位およびその関連領域の変性が知られているが,脳炎後遺症としてのパーキンソン症候との関係,遺伝の有無などいまだ未解決の多くの問題を含んでいる。錐体外路系とくに基核を中心とした部位の機能の神経解剖学的および神経生理学的分析はその部位が脳の深部にあること,神経線維連絡の複雑なことなどにより十分に解明されていない。一方パーキンソン氏病の生化学的研究は緒についたばかりで,研究の結果から多くの仮説が生れたが,決定的なものは現在のところ期待できない。この疾患で観察された明確な生化学的異常は黒質におけるメラニン色素の減少ならびに線状体におけるある種の生体アミンの減少である。これらについていままでに集積された研究結果について紙面の許す範囲で総説する。なおこの方面の外国の総説はHornykiewicz2)3)およびCur—zon4)のものがあり,そのほか1963年Washingtonで開かれたパーキンソン氏病に関するsymposiumにおける報告も参照されたい。
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