神経組織化学アトラス7〈臨床編(1)〉
脱髄性疾患,リューコジストロフィーの組織化学
横井 晋
1
1群馬大学医学部精神神経科
pp.986-990
発行日 1968年10月1日
Published Date 1968/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202444
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リューコジストロフィーの中で最も問題になるのは,塩基性アニリン色素に異染性(metachromasia)をしめすセレブロシド硫酸エステルが蓄積する異染性白質変性症が,組織化学的に注目される。Hirsch-Peiffer (1955)によつて始められた酢酸クレジール紫法によつてきれいな褐色の異染をしめす。図1は成人例の後頭葉で,トリエタノールアミンと酢酸溶液のBuffer pH 5.0に0.02%クレジール紫を溶かした染色液で染めたものである。このような異染性はセレブロシド=脂肪酸・スフィンゴシン・ガラクトーズ,のガラクトーズのC3の位置についている硫酸基のつよい陰電荷によるものであり,トルイジン青では赤色をしめす。したがつて褐色異染性をしめすものは必ずしもセレブロシド硫酸エステルとは限らず,ある程度の分子量をもち硫酸基のついた例えばコンドロイチン硫酸でも同じような色調をしめす。図2は顕微鏡下のセレブロシド硫酸エステルを多く含んだ顆粒をしめしている。血管周囲のものは一段と濃く染つている。
異染性脂質の蓄積は白質のみに止まらず,神経細胞内にもみられるが,塩基性アニリン色素の他に,Hollanderによるアクリフラビン法でも美しい螢光を発するが,それにp-dimethylaminobenzaldehydeをかけると図3のような赤紅をしめす。この方法でも,あらかじめメタノール・クロロホルムなどで処理したものを対照として比べないと,コンドロイチン硫酸の存在を否定できない。図は歯状核で細胞内および細胞外に赤色の脂質が散在している。
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