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組織化学的研究技法が超微細構造による組織学とその等価像への絶えまない努力に導かれて,ここ数年間にいちじるしい変貌をとげつつあることは読者も周知のところである。組織化学が生化学と電顕組織学の基礎を有効にとりいれ,新しい方向を見出しつつあるとき,米国組織化学会から正会員としての推挙をうけ初めてnational meetingにのぞみ,重要なturning pointに直面しつつある米国における斯界のtrend lineを日本のneuro—histochemistryに関心を持たれる方々にお知らせすることが,なんらかの意味で相互の交流のために役立つものと信じ,この.短信を急いでお送りするしだいである。
本学会は会頭をミネソタ大病理Wattenberg教授,副会頭に加州大Hunter教授を頂き,現地のTulaneおよびLouisiana Univ.の協力で美しいミシシッピー・デルタの一角を占める仏系移民の街New Orleansのもつとも有名なFrench Quarterの真唯中Hotel Montele—oneで開催された。まつたくユニークな仏系植民地スタイルの南国の街々,数歩をいでずして「欲望という名の電車」でその名も高いバルボン街があり,まさにその名にふさわしい爛熟した夜の歓楽街が参加の医人達のlimbic systemをゆさぶり,たちまちにして強力なcyto—chemical reactionをひき起こさせるに足る豪勢さであつた。ともあれ第一日早朝満堂の参加者を迎え,NIHのGlenner博士を座長として開会された演題の中より,神経系と関連領域のいくっかのpaperを御紹介したい。Drs. Holtzman&Peterson (Columbia&Albert Einstein)はNeuronの滑面小胞体(GERL)とlysoso—meの蛋白とり込みの問題をネズミ脊髄後索(節状索)の組織培養材料で追跡,free-fioatingのcover-slip me—thodで培養後アルデヒド固定標本とし,lysosomeの"Marker"enzymeとしてAcPおよびaryl sulfataseを,GolgiにThiamine PyrophOsphataseを,糸粒体のMarkerとしてNADH2を用い,AcP陽性結果をGERLおよびGolgi stack内面に認め,同様にAcPおよびaryl sulfataseをdense body並に,lysosome中に検出。Autophagic vacuolesおよびMVBはしばしばNeuronal Perikaryaおよびaxonに,しかもそれぞれdense bodyへの移行型の存在を指摘,HarvardのKarnovsky法によるexogeneous horseradish peroxidase法では小胞並に核周囲のneurotubulsへの取込みが明瞭に示され,MVBへの移行型としての"cuplike"structureに注目された。特にGolgi中に多くのper—oxidaseを含む小胞がみられ若干の酸性水解酵素はGolgiあるいはGERLにも由来するものと推論された。副腎髄質のparagangliaでは,シナプス前終末や無髄線維中にいわゆるcoated vesiclesとして,そしておそらくはtubulesにも取込まれ,MVB様物質中やaxon自身にも時として陽性結果が記載された。彼らの示した推論は当然多くの質疑討論を招き,まず学会誌編集主幹のN. Y. Mt. Sinai, Barka博士によりmembrane pino—cytosisへの確証について,ついでMcGill大解剖Leb—lond教授よりGolgi uptakeとdense bodyへの移行像への適切な説明が求められ,一括討議にてNovikoff教授から暫定的結論としてGERLよりdense bodyへの移行,membrane pinocytosisから MVB-dense bodyへ,そしてGolgi stackからMVBへの周知のschemaによって締くくりが行なわれた。
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