研究
出血性糖尿病性網膜症—下垂体柄部切除,もしくはBragg Peakにおける陽子照射による治療
畠中 坦
3
William Herbert Sweet
1,2
1Harvard大学外科
2Massachusetts総合病院脳神経外科
3東京大学医学部脳神経外科
pp.12-18
発行日 1967年1月1日
Published Date 1967/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202156
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I.緒言
デンマークの内科医Poulsenは1953年,30歳の重症糖尿病の婦人が,難産の結果,自然に下垂体の破壊が起こり,そのために網膜における出血と浮腫が消失したことを報告した。このことから,Luft,Olivecronaらは,糖尿病に伴う網膜病変の治療に対し,外科的下垂体摘除を試みた。従来,この方法でもつとも大きな経験を積んだのは,Pearson,Rayらであり,最短3年半以上追究した14症例の成績を,1964年に発表した。PearsonとRavの2つのクリニックでは,1960年以来,さらに27例を同じ方法で治療している。
報告にある14例中,2例は3週間以内に死亡し,もう1例は術後の胃腸出血のための輸血に伴う急性肝炎で死亡した。生存11例の8例は網膜病変の改善を認め,これは手術総数の57%にあたる。Sweden, GoteburgのHambergerらはTranssphenoidal approachによつて下垂体の除去を行なつている。1962年Sjogrenは急速に進行する網膜病変を行する患者のうち最初の26例について,術後早期死亡2例,下垂体摘出不完全2例,残り22例のうち,手術前に完全に盲とはなつていなかつた21例について,その14例,すなわち66%では網膜病変の進行が停止し,4例は進行をみたという成績を収めた。
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