Japanese
English
治療
うつ状態に対するChlorprothixene(トラキラン)の使用経験
THE CLINCAL EFFECT OF CHLORPROTHIXENE ON DEPRESSIVE STATE
保科 泰弘
1
,
野崎 央
1
,
田宮 崇
1
Yasuhiro Hoshina
1
1新潟大学医学部精神神経科
1Dept. of Neuropsychiatry, Niigata Univ. School of Medicine
pp.519-522
発行日 1962年6月1日
Published Date 1962/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201274
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まえがき
戦後,反応性,内因性を問わずうつ状態を主症状として精神科を訪ずれる患者が増したといわれるが,その治療法はきわめて乏しく電撃療法以外には効果を期待し得るものは皆無であつたといつても過言ではない。しかし1952年のクロルプロマジンの登場を契機として精神科領域における薬物療法は飛躍的な進歩をとげ,他種抗うつ剤の発達とともに抗抑うつ作用を期待し得るフェノチアジン誘導体も登場してきた。さらに最近の傾向としてイミプラミン,アミトリプチンなどにみられるごとくフェノチアジン核そのものを変換し,より強力な,より副作用の少ない薬物を作りだそうとする努力がはらわれている。Chlorprothixeneは,この一連の研究中に発見されたものであり,クロルプロマジンのフェノチアジン核中の窒素が炭素に置換されたチオキサンテン系でその薬理作用はB. Pellmontらによればクロルプロマジンに比し毒性は約2倍,中枢に対する作用は2〜7倍,自律神経系に対する作用は弱いと報告されている。
臨床的にはBoitelle, Hoffet, Feldman, Mas—ciocchiらにより精神分裂症,躁病,うつ病,神経症と広範囲にわたり試用され,うつ状態,躁状態に対する著効を中心として幅広い作用スペクトルを有することが発表されている。われわれはエーザイ株式会社の提供でTraquilan (1錠中chlorprothixene 15mg含有)を使用する機会に恵まれたので現在までに得られた結果の概要を報告する。
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