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近年,精神科領域における薬物療法が盛んとなつてきているが,うつ状態に対しても1954年ごろから種々の薬物が相ついで登場している。すなわち,Pipradol誘導体(Meratran),Piperidine誘導体(Ritalin),Iminodibenzyl誘導体(Tofranil),2-Dimethylaminoethanol(Recrein)などがそれであり,それぞれstimulantあるいはanti-depressantとして使用された。とくにTofranilの効果はすでに多くの人々によつて認められ,うつ状態の治療に欠くべからざるものとなつている。
ここに紹介するHydrazine誘導体,Nialamide(Niamide)もanti-depressantとしての作用を有するものであるが,Hydrazine誘導体がうつ状態に有効であるということは,すでに古くから知られている。1950年,A. C. Washburneが抑うつ反応に対するnicotinic acidの大量療法について発表したが,その後Hydrazine誘導体が潜在的にanti-depressantとしての作用を有すること,およびその作用がmono-amine oxidase inhibitorsに起因していることが証明されるようになつた。この間Iproniazid(Marsilid)がうつ病の療法として紹介されたが,副作用とくに肝障害が顕著なために実用に供されるにはいたらなかつた。その後1957年にいたつてIproniazidと同様にHydrazine誘導体に属するNialamideが,やはりanti-depressant activityを有することがわかり,動物実験では,肝中毒作用およびそのほかの副作用のないことが証明され1),臨床的応用が期待される段階にいたつた。Nialamideは,化学名が1-〔21-(benzylcarbarbamyl) ethyl〕2-isonicotinoyl hydrazineであり,その構造式はである。
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