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私どもが内臓からの求心路,とくに腹痛に関連してこの問題を考えるときに,いつでも体壁に起こつてくる反射の模様が一つの焦点になつています。例えば内臓痛から腹壁筋の緊張が起つたり,関連痛を生じたりするのですが,この体壁の変化は内臓に加わる刺激の強さに応じて拡大する傾向があります。内臓への刺激が強くなつてきますと体壁の反射性筋緊張は最初分節的であつても次第に上又は下の分節に波及してきます(第1図次頁参照)。Sherringtonの説の如く内臓から体壁への反射の投影は通常一定の主分節がありますが,それからだんだん上下へ拡がる傾向があります。この現象を私は一応末梢の知覚線維分布の方から説明しており,一つの内臓の知覚線維は非常に多くの脊髄分節から重複支配を受けているから反射はdiffuseに拡がり得るというように解釈してみたのですが,実際はもつと重要なものは脊髄にあると考えられます。脊髄に於いてimpulseが一つの分節から周囲の分節へ拡がることを当然考えなければならないと思うのですが,いまお示し下さいました伝導路の模型図ではこのような点がちよつと私には解らないのです。脊髄の中を単一神経元として上位中枢に到達する,いわば直通路の他に各分節毎に反射を起こしながら進む機序を説明し,その点をはつきり理解させていただきたいのですが……。
久留 外側脊髄視床の線維が非常に早く対側に交叉するということは,臨床的によくこれを証明することができます。これに対して,比較的斜めの走行をたどつて数髄節を費して交叉していく線維があるのですが,おそらく脊髄延髄路の線維は,こういう風な交叉をする線維からなり,数髄節かかつて対側に交叉するのではないかと思います。こういう事柄は,同側ならびに対側の中間層あるいは前角の細胞群に側副枝を送ることを意味すると考えられます。その上この経路の線維群が前角の側縁かう白質に出るという事実も只今の御質問を答えるのに好都合かと思います。私は延髄との関係を強調するあまり,脊髄延髄路の走行をかなり単一化してシェーマにしましたが,もちろん所属神経細胞から出たしばらくの間は,かなり多数の側副枝的連絡を上下の髄節に送るものであると信じます。交叉を完了してから上では,灰白質と離れますから,あまり側副枝を出さないものと考えますけれども。側副枝はGolgiでないと証明しにくいので,実験的研究でないと無理と思います。こういうことが今お話になりました刺激の強さに伴つて,分節の反応が上下にひろがつて出てくるという問題と関係を持つものではないかと考えます。
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