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1941〜1950年間の精神分裂病学説における研究と概念変遷(その2)
Fortschritte der Neurologe, Psychiatrie undihrer Grenzgebiete 19,385,1951.
関野 ヤス
1
1横浜市立大学医学部神経科教室
pp.433-438
発行日 1956年1月20日
Published Date 1956/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200484
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VI.病態生理学的研究
1941年以前には--容易に思い返すことが出来るように——分裂病は新陳代謝疾患として説明しうるという期待から無批判な楽天観が支配的であつた。誤つて分裂病性身体病の発見であると言われていたことを今日では誰でも知つている多数の所見が,当時は本質的な進歩と思われた。この誤謬は一般に技術の欠陥,研究資料の数が少かつたこと,或は分裂病でない人の分裂病に相当した状態がどうであるかゞよくわかつていなかつたこと等に帰せられる。本報告期の始めの2,3年間に科学的研究たるこの病態生理学的立場には,二種類の成果がもたらされた。第一には分裂病の病態生理学に強い多面的な興味が示されたことである。(それが証拠に,本報告期に於ける分裂病の病態生理に関する報告数は,身体的療法の報告についで群を抜いて多く,発生学的研究,病理解剖学的研究,精神病理学的研究並にその他の研究の論文をはるかに上まわつている)。第二には楽観的な無批判に対する鋭い反動が目立ち,最近の研究の特徴は秀れた技術と豊富な資料と所見の意義づけにあたつて充分に偏見をすてさり愼重を期した点である。
大多数の研究は個々の研究に完結を求めようとすることを禁じており,症例についての主要傾向だけが大略示されうるに過ぎない。先づ,最もしばしば研究された生理的機能の種類について概略を示そう。一般にみられるところであるが,『分裂病』では一定の所見(例えば,基礎代謝,血糖,血中の残余窒素等)を問うような古いことは殆んど放擲され,全体の機能経過--殊に何等かの毒作用及びその他の刺戟作用についても--が研究され而もしばしば分裂病の一定群に於て研究される。
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