特集 耳鼻咽喉科診療の進歩
平衡生理学説の変遷
福田 精
1
1岐阜県立医科大学
pp.645-658
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201237
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Ⅰ.序
私には「平衡生理学説の変遷」と課題され,簡単に御引き受けしたものの,いざ着手してみると実に難しい大問題である。成程最近の内外文献の業績を羅列報告すれば,先ず一応それで済まされるが,之れでは変遷の表面を写すのみで,核心を衝くものでなく又私の性格としては不可能事である。それで最近の欧米並びに本邦の平衡生理方面の業績を材料とし,之れを紹介しつつ私の考え方主張をここに打ち出してみた。この材料の中核をなすのは,最近外国文献に,よくみられるcupulometryで,之れを足掛りとして私の考えを展開してみた。cupulometryは後述する通り色々な問題を我々に投げかけている誠に興味深い新しい方法であると同時に,古い考え方である。古いと私が批判する所以を文中に明らかにした積りである。
又,この一文は,余りに我流過ぎて,「平衡生理学説の変遷」ではなく「私の平衡生理に対する意見」と改題した方が,或いは内容にふさわしいかもしれない。只ここに述べておきたいのは,私としては動物並びに人の平衡生理を真劒に考えその根底を探り,迷路機能の核心に触れたつもりである。この一文が次代に,平衡生理,迷路生理,をなさる若い人々へ,渡すバトンの役目を果さんこと,それのみがこれを草する私の今の希いである。
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