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臨床的には氣付かれなかつた淡蒼球の部分的萎縮を伴なうMarie-Foix-Alajouanine型家族性晩發小腦皮質萎縮症に就て
3代の間に母,その3兒の内の長男及び次男,更に次男の6兒の内の2名の計5名がMarie-Foix-Alajouani-+ne型に屬する晩發性小腦皮質萎縮症に罹患した一家族の觀察である。5名とも凡て50才と60才の間に動搖性歩行ならびに企圓震顫をともなわぬ協調不能を以て發病した。錐體路症状及び知覺異常なく,輕い言語及び嚥下障礙が見られた。剖檢鏡檢することを得た次男では以上の外に,上肢に舞踏病樣の異常運動が見られたが,顯著なものではなく,小腦萎縮の經過中によく見られる程度のものであつた。剖檢の結果は,1°,小腦虫部及び半球の内側及び背側部につよい皮質の萎縮ならびにオリーブ核背側灰白板の萎縮。2°,淡蒼球の全長にわたつてsegm-ent externeに系統的な萎縮があり,核の後方1/3では細胞の減少が著しく,之に應じてグリヤ細胞の増殖が見られた。以上の如く小1腦における病變のひろがりはMarie-Foix-Alajouanine型のそれとよく一致して居り,オリーブ核の變化は小腦の病變による二次的のものと考えられる。さらに高度の病變が錐體外路系に及びながら,それによる症状は殆んど氣付かれていない。淡蒼球は單獨で進行性家族性の萎縮を起すことがあり,又ルイ氏體淡蒼球萎縮として遺傳性失行症,癌毒性小腦萎縮症及びオリーブ橋小腦萎縮症と併發することがあるが,同系統の症状が現われるか否かは小腦萎縮に封するその障磯の強さ及び發病の時期が關聯するものと考えられる。なおこの家系を詳細にしらべると,數人のものに癲癇やアルコ—ル中毒の如き"niveau bral"の脆弱性が證明され,病竈と症状の間に形態的に充分の説明がつかない時にはかゝることをも考慮に入れる必要がある。
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