Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
腦外傷の分類はいまだに古典的な腦震盪症,腦挫傷,腦壓迫症の分類が使用されているが,この分類法の缺陷は既に多く指摘されているところであつて實際應用に際しても都合の悪るい事が多い。それにも拘らずこの方法が慣用されている理由は應用價値の高い分類法を組立る爲めに必要な資料が現在あまりにも乏しい事にあると思われる。由來腦外傷の本態に就ては古くから種々の議論があるけれども主として病理解剖學的所見に基いたものが多く,生體殊に人體に於ける本態追究の努力は比較的少い。さて腦外傷に腦腫脹が伴うことは古くからみとめられている事實であるが,我々はこの現象に注目し腦受傷直後から症状固定し治癒の時期に至る迄頭蓋内に起る變化を時間の經過を逐つてX線的に觀察し動態的な病態の把握を試みた。然るに從來ならば單純な腦震盪症として取扱われる樣な症例中にも,その急性期には意外に著しい腦室縮小像をみとめ,次第に治癒に向うに從つて腦室は漸次擴大におもむきつひには鰭崎(1)が報告している樣な著しい腦室擴張像を示し,腦質の萎縮を思わせるものもある事を知つた。此樣な變化を見ることは重症例に劇しく,輕症例にはさほど著明ではないけれども,腦外傷には此樣な1連の變化が輕重の差はあれ必ず起つている事を推定することは困難ではない。こゝに於て我々は上記の腦X線像の變化こそ外傷によつて惹起された腦の病態--その本態に就ては猶研究すべき餘地があるが--の程度を表す示標として最も適當なものではないかと考えて,これを根據として一元的に腦外傷の分類を試みてみた。腦外傷分類の根據としての外傷腦X線像の價値及び分類の技術的事項に就て嚴重な批判を得たいと考えている。
研究對象と方法。
Copyright © 1949, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.