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社會保障とその根據
大河內 一男
1
1東大経済学部
pp.3-5
発行日 1950年1月1日
Published Date 1950/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200067
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「社会保障」という言葉は,終戦後における流行語の一つになつている。それほど,誰もが社会保障を口にしながら,而もこの制度の正しい歴史的意義や位置づけについては,何人も冷静な反省をしているとは言い雑い。単に,日本だけのことではない,イギリスやアメリカを暫く措くとしても,世界全体として今日では「社会保険から社会保障へ」の動きは,最早やさけることを得ないであろう。だとすれば,社会保障制度への動きが世界的に不可避なものになつてきたと言うのは,そもそも如何なる理由によるものであろうか。そして若し,社会保険制度や社会事業などに代つて,新たに綜合的な社会保障制度が登場するとしたなら,それに応じて,如何なる条件が,産業制度の上で,労働法制の上で,また医療制度の上で,みたされなければならないか,従来の既存のものに対して,どのような変革が準備されなければならないのか。今日,日本でも社会保障制度樹立の必要が叫ばれ,われわれはまさにその門口に立つているのであるが,それだけに,この新しい制度の個々の点の細目を論議する前に,右のような問題の一般的意味,その現段階における重要性について,充分な反省をするだけの誠実さがなければならないのではないか。
何故,社会保障というような,新しい制度が必要とされるに至つたのであるか。従来の生活扶助のそれぞれの制度を,新たに社会保障制度に改変する必要はどこにあるのだろうか。
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