Japanese
English
特集 睡眠障害と体内時計
3.時刻認知学習と体内時計
Temporal Anticipatory Behavior and Circadian Clock
浜田 俊幸
1
,
柴田 重信
1
Toshiyuki Hamada
1
,
Shigenobu Shibata
1
1早稲田大学人間科学部薬理学研究室
1Department of Pharmacology and Brain Science, Waseda University
キーワード:
suprachiasmatic nucleus
,
restricted feeding
,
methamphetamine
,
anticipation
Keyword:
suprachiasmatic nucleus
,
restricted feeding
,
methamphetamine
,
anticipation
pp.26-33
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100426
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はじめに
体内時計により作り出される約24時間を周期とした発振リズムはバクテリアから植物,ヒトにまで共通に見ることができる。体内時計の発振機能以外のもう一つの機能である,外界の環境に自分自身の体内時計を同調させる機能は,生物種によって異なるように思われる。太陽の光を必要とする植物や生物は光が最も強力な体内時計の同調因子になりうる。
一方,それ以外の同調因子として食事がある。ミツバチの集蜜行動を例にとると,ミツバチに蜜を1日のある特定の時間にのみ与えるようにすると,この時間帯にミツバチは集まってくるようになる。このことを数日間繰り返し,ある日蜜を与えなくてもミツバチはいままで蜜をもらっていた時刻にやってくるようになる。この現象は時刻認知に伴う時間記憶と呼ばれている。弱肉強食の世界においては,草食動物は捕食動物から身を守りながら1日の中のある特定の時間に餌を食べて生きていくことが重要となり,これらの動物には時間記憶による同調機構が必要となってくる。捕食動物もそれに伴い行動リズムが変化することも考えられる。
ヒトにおいては安定した社会生活を送る上で,光同調機構と同様に,時間記憶による同調機構も必要であると考えられる。そこでこの章では,体内時計を強力に,1日のある時刻に同調させる機構として,制限給餌から同調させる機構と,薬物(メタンフェタミン)により同調させる機構について説明し,それに伴って起こる時刻認知学習としての予知行動リズムの形成機構や体内時計遺伝子との関連について解説する。
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