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はじめに
ヒトの生体リズムは多くの動物と同じように体内時計によって駆動され,24時間より長い周期を持ち,体内時計はこの周期を外界の24時間の環境変化に同調させる機能を持つ。外界の24時間の環境変化は地球の自転によるものであり,主として昼夜の光環境による周期性の変化である。目から入る光信号は体内時計として機能する視交叉上核へ伝達され,昼間の明環境および夜間の暗環境が正常な睡眠・覚醒リズムを保つ上で必須の条件である。
しかし,現代の24時間社会では夜に活動して昼間に眠るなど自然の昼夜環境とは異なった明暗サイクルで生活している機会も増加してきた。このような生活環境が体内時計の機能不全を引き起こし,正常な睡眠がとれない人々が多くみられる。このような体内時計が関連する睡眠障害は,概日リズム睡眠障害として1990年の睡眠障害国際分類3)では1群にまとめられた。この概日リズム睡眠障害には,夜勤や時差の大きい地域への飛行などによる外因性の急性症候群(交代勤務と時差症候群)と,体内時計自体あるいはその同調機構の障害によって睡眠スケジュールを望ましい時間帯に合わせることが困難な内因性の慢性症候群(睡眠相後退症候群,非24時間睡眠覚醒症候群,不規則睡眠覚醒症候群)が含まれる。現代の社会生活で大きな問題となっている睡眠相後退症候群(DSPS)や,非24時間睡眠覚醒症候群(Non-24)は入眠時刻の極端な遅れのために社会生活に支障をきたしている病気である。さらに,このような病気は長く経過するにつれ心身の不調を伴い,うつ病や自律神経疾患などを併発する場合が多い。このような患者は最近でも社会的には怠け者とみなされ,社会的な不利を蒙る場合が多かった。そして,このような障害を持つ人は一般人口の0.1~3%にものぼることが報告され9),今後ますます増加する傾向にあり,その病態解明,治療・予防法の開発が急務の課題である。ここでは概日リズム睡眠障害について臨床面と時間生物学的研究面から概観する。
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