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はじめに
パーキンソン病(Parkinson's disease:以下PD)にみられる異常姿勢については多くの報告があり,この異常姿勢は体幹の前屈,側彎,上下肢の異常肢位に大別され1),手指の変形はその異常肢位のひとつである。本稿ではPDの手指の変形について形態的な側面と電気性理学的な側面から,筆者らの検討を過去の報告とあわせて紹介する。
手指の変形については1872年にCharcotが記載した2)「ペンを持つ手」肢位が有名である。この変形は,典型的には中手指節(Metacarpophalangeal;以下MP)関節が屈曲し,指節間関節が伸展した形であり,解剖学的には虫様筋や骨間筋が関与している。手の変形に関してはOnuaguluchi3)やGortvai4)らを始めとしていくつかの報告がなされており分類化もされている。しかし詳細に観察すると,過去に報告されている変形よりも軽度な変形も多くみられる。そこでわれわれは新しい分類を試みた。
手の変形は手内筋の過収縮が原因と考えられ,また手の固縮と関連があるとされてきた3)。さらに,視床腹外側核の定位脳手術が手の変形を治癒させたという報告があり4),中枢神経システムと関係があると考えられている。また電気生理学的な評価から,ジストニアすなわち持続的で不随意な筋の収縮5)に起因するものとして理解されているものの,詳細な報告は乏しい。 Heinzelmannら6)は手の変形をきたしたPD患者の針筋電図を調べ,手内筋の安静時持続的収縮を検証した。しかしこの症例はclaw handタイプの手の変形であり,PDには少ない。Cordivariら7)は典型的な手の変形をきたしたPD患者7人の手内筋に針筋電図を行い,安静時の過収縮は虫様筋に高率にみられ,ボツリヌストキシンの投与により軽快することを示した。
われわれは軽度の変形症例も含め,多くの症例で変形の有無とその形を検討するとともに,虫様筋の持続収縮の筋電図による検討と手の変形の関係を検討した。また,パーキンソニズムを呈する疾患のひとつに脳血管性パーキンソニズム(vascular parkinsonism:以下VP)8)があるが,欧米ではVPに対する認識が低く9),そのためかVPについて手の変形を検討した報告はない。そこでわれわれは,Yamanouchiらの報告を参考に10),臨床的にVPと診断した症例についても同様に検討を行った。
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