インドネシアからの手紙
豊富な自然と経済との矛盾
森 みね子
pp.44-45
発行日 1968年6月1日
Published Date 1968/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203578
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経済的沈滞の原因は?
あるネシア人のインテリ女性が自国のことをこんなふうにいった.それはこの国の経済問題についての,度重なる私の質問に対する答えであるが,「インドネシア・ことにジャワは自然に恵まれている.でもそれが野放しのままにされている,多くの人々はそれらの資源を活かす術も知らないし,また活かそうと努力をしないのだ」と,彼女は歯ぎしりせんばかりに私に語った.「ではこの国でお金持とは誰のことをさすのか」と聞くと彼女はさらに語調を強めて「政府や軍隊の幹部連中や華僑でしかない」という.日本の社会構造と対照してみると明らかに中間層がない.なぜこんなことになるのか彼女が第1に指摘したことはこの国の為政者のミスマネージメントだという.20余年前の独立以来国の経済は前進するどころか後退にも価する悪化状態を辿っている.
第2点は,国民の無知・無関心さである.教育はいちおう小学校から義務化されているとはいえ人々には教育に関心が向けられるほどの経済的余裕がないのであるから当然の結果であろう.
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