Japanese
English
展望
多重人格—その批判的考察
Multiple Personality Disorder: a critical review
保崎 秀夫
1
,
萩生田 丹生谷 晃代
2
Hideo HOSAKI
1
,
Teruyo HAGIUDA-NIBUYA
2
1常磐大学
2慈雲堂内科病院
1Tokiwa University, Department of Human Sciences
2Jiundo Hospital
キーワード:
Multiple personality disorder
,
Dissociative identity disorder
,
Iatrogenesis
,
Unconsciousness
,
False memory syndrome
Keyword:
Multiple personality disorder
,
Dissociative identity disorder
,
Iatrogenesis
,
Unconsciousness
,
False memory syndrome
pp.122-132
発行日 1999年2月15日
Published Date 1999/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904704
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はじめに
多重人格は,専門家だけでなく,人間の精神に少しでも関心を持つ一般大衆をも魅了してやまないテーマであった。『ジキル博士とハイド氏』『私という他人』『24人のビリー・ミリガン』といったマスメディアによって喧伝された多重(二重)人格物語が動機の1つとなって,精神医学や臨床心理学を志望された方も,少なからずおられるのではなかろうか。しかし,臨床の現場では滅多にめぐり合えるものではなく,その後習得した専門知識や日々の多忙の下に,記憶は押しつぶされていくのが大方ではないかと思われる。
さて,ここ数年,本邦では,多重人格の発表が相次ぎ,複数の専門誌で特集が組まれるなど,今のところ症例数ははるかに少ないものの,北米より約20年遅れての多重人格症例の急増,いわば日本版の“multiple personality epidemic10)”が起きている。これは,後述するように,時代的背景と不可分の現象と考えられる。しかしながら,多重人格概念が定まった位置を得ているとは思えないのは,欧米と同様である。以下,多重人格の歴史と現状を概観し,問題点を整理してみたい。
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