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はじめに
精神科病院における作業療法は,その多くが集団プログラム制である。すなわち,患者の病状や能力に応じ,集団の質・形態・内容などを考慮した上でプログラムに参加させ,精神機能・身体機能・生活能力などの向上,改善を図る場合が多い。その結果,表情が柔和になった,取り組みが積極的になった,集中力・持続力が向上した,言語表出が豊かになったなどの変化が認められれば,病状の改善を示す根拠のひとつとなる。しかし,病状が改善さえすれば,退院後の地域生活や就労が円滑に進むわけではない。
当然ながら,患者は一人ひとり異なる特性を持っている。病状・機能・能力・家族機能・住環境・家計などのみならず,生育歴や人生観・希望などは大きく異なっている。筆者はこれまで,生活するための基本的能力の向上や病状改善を目的とするのではなく,患者本人が希望する生活,やりたいこと・やってみたいことなどの,意味のある作業2)の直接体験と実現を目標とした個別作業療法を行うことにより,在宅移行が促進され,地域生活も安定するという経験を数多くしてきた。また,薬物療法と安静のみでは病状が改善しない重度の難治例,保護室で安静が必要な急性期事例など,これまでであれば作業療法の対象外となっていた患者に対しても,同様の個別作業療法を実施してきた。これらの作業療法を実施する上で欠かせなかったのは,医師をはじめとする他職種に向けた,作業療法活用法のPRであった。
本稿では,そのPRのために作成した,埼玉県立精神医療センター(以下,当センター)の「OT活用ガイド」などの紹介を通じ,目標志向的に行っている個別作業療法の実践について触れ,精神科病院における作業療法の役割と活用法について述べたい。
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