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はじめに
わが国の気分障害臨床において,リワークプログラム(以下,リワーク)が導入され,都市部を中心に広まりをみせてから10年余になる。気分障害に対する包括的なリハビリテーションの導入は当時きわめて画期的なことであったが,今や日常臨床に定着し,近年では休職者のみならず再就労や就労支援など,社会復帰を目指すすべての患者に援用できるプログラムとして拡がりをみせ,医療のみならず職域や福祉の現場でも行われるようになって成果を上げつつある。また,当初は休職者の復職支援に留まっていたその内容も,再発予防や症状管理のための認知行動療法や心理教育のみならず,認知リハビリテーション,職業スキル訓練的なものまでかなり多様化してきているものと思われる。
そのような中で,復職困難事例に対する対応は大きな課題となっており,双極性障害や発達障害などといった「個別の疾病性」もその要因として取り沙汰されている1)。中でも双極性障害は復職を妨げる重要な疾病要因の一つであり,その労働喪失日数は単極性に比べてかなり高いとの指摘が成されている23)。本特集のテーマである双極Ⅱ型障害は,本人も自覚的ではない微妙な軽躁病相の存在が長時間の他覚的観察によって初めて明らかとなる場合も多く,リワークの枠組みの中などであらためて診断確定されることも多いと言えよう。五十嵐によれば,リワークにおける双極性障害の占める割合は28.4%と最も多かったと報告されている8)。しかしながら,単極性うつ病を想定してプログラムを発展させてきたリワークにおいて,双極性障害に最適化されたプログラムは未だ確立されておらず,臨床的な問題の大きさに比して,利用できる資料やエビデンスはきわめて限られているのが実情である。また,実際のリワークの現場では,単極性や双極性,発達の問題に至るまで幅広い疾病性,個別性のものを一緒に診ていく必要があり,疾患別のメニューを用意することは現実的ではないという問題も考えられる。
本稿では,まず双極性障害に対するエビデンスが示された精神療法から,本疾患に対する介入の共通因子を抽出し,単極性との相違を考慮しつつ,双極性障害に対するリワークまたは認知行動療法(CBT)を用いた包括的な心理社会的介入の工夫について考察する。なお,上述のごとく双極Ⅱ型障害に限定して論考するには現時点で資料がきわめて限られており,本稿ではⅠ型を含めた双極性障害一般として論を進めたい。
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