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はじめに
「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版」(DSM-5)13)によれば,双極Ⅱ型障害は,1回以上の抑うつエピソードと,少なくとも1回の軽躁病エピソードからなる再発性の気分エピソードという臨床経過をとることで特徴付けられる精神疾患である。双極Ⅱ型障害の患者を平均13.4年間にわたり追跡調査した報告によれば,抑うつ症状を呈していた期間が50.3%,軽躁症状を呈していた期間が1.3%,急速交代/混合症状を呈していた期間が2.3%であり,寛解期は46.1%にすぎなかった8)。すなわち,双極Ⅱ型障害の患者では,寛解期にある期間よりも,何らかの気分エピソード(そのほとんどが抑うつエピソード)の症状が出現している期間のほうが長いと言える。同様に,双極Ⅰ型障害の患者を平均12.8年間にわたり追跡調査した報告7)の結果は,抑うつ症状を呈していた期間が31.9%,躁/軽躁症状を呈していた期間が8.0%,急速交代/混合症状を呈していた期間が5.9%であり,寛解期は52.7%であったことから,双極Ⅱ型障害の患者では,双極Ⅰ型障害の患者よりも寛解期が短い(すなわち気分エピソードを呈している期間が長い)ことが分かる。
しかし,結論を先に記してしまえば,双極Ⅱ型障害の治療法は,双極Ⅰ型障害のそれと比較して,エビデンス・レベルの高いものが少なく,確立されているとは言いがたい。国内外の治療ガイドラインを繙いてみても,双極Ⅱ型障害に関する記載はきわめて乏しいと言わざるを得ない。
本稿では,双極Ⅱ型障害の治療薬に関するエビデンスや治療ガイドラインにおける記載について概説するとともに,現時点における双極Ⅱ型障害の薬物療法について考えていきたい。
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