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ニコチン依存かタバコ依存か
本稿のタイトルはニコチン依存であるが,ニコチン依存なのかタバコ依存なのか,すなわち,依存の原因がニコチンなのかタバコなのかの議論は古くからある。国際的な診断基準をみても,アメリカ精神医学会の精神疾患の分類と手引(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:DSM)では,DSM-Ⅲではタバコ(煙草)依存,DSM-Ⅲ-R,DSM-Ⅳ,DSM-Ⅳ-TRではニコチン依存であったものが,DSM-5で再びタバコ(依存から使用障害に診断名は変更となったが)に変更された。一方,世界保健機関による精神および行動の障害(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems:ICD)では,ICD-10ではタバコ依存症候群であったが,現在,ドラフトの段階ではあるがICD-11ではニコチン依存となっている。
ニコチンかタバコかの議論の背景には,タバコからニコチンの成分を除去すると,そのタバコは好まれなくなってしまうことから,ニコチンこそが依存の本質であるという有名な研究がある2)。一方で,喫煙の自覚効果(依存形成に重要な手掛かりとなる感覚効果)である喫煙時の味や香り6),口腔・喉・上気道の刺激感17),あるいは,タバコを扱う仕草などがニコチン依存に重要な役割を果たしていること,特に,喉の刺激感やタールの濃度が喫煙行動を規定していること4),さらには,ニコチンのみ(ニコチンを含むガム,パッチ,点鼻薬)ではニコチン依存は形成されにくいことから5,18),ニコチンをタバコ喫煙という方法で摂取することが,依存形成に重要であるとする報告がある。しかし,両者の議論には最終的な決着はついていない。
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