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展望
小児自閉症における薬物療法の効用と限界—第1回
The Utility and Limit of Pharmacotherapy in Infantile Autism (1)
星野 仁彦
1
Masahiko Hoshino
1
1福島県立医科大学神経精神科
1Department of Neuropsychiatry, Fukushima Medical College
pp.868-878
発行日 1985年8月15日
Published Date 1985/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203987
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I.はじめに
近年様々な生物学的研究により,小児自閉症の原因として何らかの脳内の機能的もしくは器質的異常が想定されてきている。これに伴い,かつての心因・環境因説に基づいた治療法である遊戯療法は,自閉症児に対してはおおむね無効であるとされ,最近は,行動療法,薬物療法などの医学的治療が,家庭での療育指導,集団保育,特殊教育治療などと並んで自閉症治療の主体をなしてきている。しかし,自閉症児の薬物療法には薬効評価や安全性の問題をはじめとして種々の問題点があり,また,実際の薬物の使い方に関する一般的指針もなく,このため薬物療法に対して否定的な見解を持つ臨床家も少なくない。しかし,中根52)も指摘するように,薬物療法は対象の選び方や実施方法が適切になされた場合,その他の治療法よりはるかに優れた効果を示すものであり,今後は自閉症児に対する系統的,組織的な薬物療法の研究が望まれる。そこで,本稿では自閉症治療における薬物療法の位置づけ,薬物療法に伴う諸問題,薬物療法の一般的指針,実際に使用されている薬物の効果などについて述べてみたい。
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