特集 個別指導と集団指導
個別指導・集団指導—その効用と限界
田中 恒男
1
1東大医学部
pp.11-15
発行日 1962年10月10日
Published Date 1962/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202662
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I.
「私の村では,毎年大変多く妊娠中絶をする人がいて,ちつとも減る傾向がないのです.何とかこの悪習をなくそうと思つて,前から部落座談会へもつていつたり,調査してみたりするのですが,ちつとも効果がありません.何とか指導効果をあげる方法はないものでしようか.私の話し方がまずいのかとも反省しているのですが……」
こういう手紙をもらつた私は,ある日曜日,手紙の主であるO保健婦さんの村をたずねた.明るい空に平地林の緑がくつきりとさえて,如何にものどかな村の停留所におりると,迎えにでていたOさんがかけよるなり,矢つぎ早に手紙の内容をくりかえすのだつた.彼女が本当に村の人たちの健康を気づかい,眠る暇もおしんで働いている様子は,その態度からもうかがわれたのだが,肝心の家族計画指導の計画をきいて,私は,どうも腑におちない感じをもちつづけていた.
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