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抗精神病薬によるakinesiaが自殺企図に結びついた自験例を報告し,haloperidolや他のincisiveな抗精神病薬では,使用初期に薬物に対する反応的不安,焦燥,akathisiaや錐体外路症状がみられ,これらが自殺と結びつき易いことを述べた。またakinesiaはよくdepressionと混同されこの場合は抗パ剤の投与が有効なことも合わせて報告した。一方長期投与例では,haloperidol投与量が多いほど,自発性減退,精神運動抑制,不活発,エネルギーの喪失といった行為意欲の抑制を主とする症状が強いことをSDSを使用して確かめ,さらに自殺者71名について,抗精神病薬の使用状況を調べ対照と比較すると,haloperidolの投与量や単独投与例が多いことを確かめた。しかしこれらの病像は,気分の水準が真に低下し悲哀・抑うつ感情を主とする内因性うつ病像とは多少異なっていると思われる。しかし前述のAydl)のように全く異ならぬと考えている学者もみられる。このように研究者により概念の混乱がみられるのは,"depression"ということばの有する多義も一原因となっている。意欲,行為の抑制のみでdrug-induced depressionの存在を認めるものと,真の気分の低下がない場合にはこれらの存在を否定するものも多い。Cohenら5)は,このような混乱を避けるためpseudo-depressionという名称を用いている。Floruら8)は,より厳密なdrug-induced depressionのクライテリアとして次の項目をあげているが,今後の研究の参考となろう。①以前にdepressionのエピソードがないこと,②明白な反応因の欠如,③単に5〜7週間の治療でなく,長期治療後に生じること,④錐体外路症状,薬物による眠気・集中力の欠如が同時に存在すること,⑤症状はvitalityの喪失として特徴づけられること,⑥薬物療法とdepressionの開始に活性アミンが相関すること。
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