Japanese
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特集 精神障害と家族
精神障害と母子関係—母子心中を中心として
On the Mental Disorders and Mother-Child Relationship : From the Viewpoint of the Mother-Child Double Suicide
大原 健士郎
1
Kenshiro Ohara
1
1慈恵会医科大学精神神経科教室
1Dept. of Neurol. & Psychiat., Jikei Univ. School of Med.
pp.1271-1278
発行日 1973年12月15日
Published Date 1973/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202113
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I.はじめに
精神障害の発現に,人間関係,とくに家族内対人関係が重視されるようになってから,すでに久しい。中でも,母子関係の歪みは,神経症,各種精神病,あるいは非行,犯罪,自殺などの精神医学の重要課題と深くかかわり合っていることが広く知られている。これはもちろん,母子関係のあり方が基礎人格の形成に重要な意味を持つことを示唆するものであるが,一方では,精神障害者の治療やアフター・ケアーでも,同じように母子関係が重視されてきている。しかし,人格の形成にしろ,精神障害の発現にしろ,単純に,母子関係の歪みのみを原因と考えるのは早計であり,母子以外の家族内対人関係や家族外対人関係,さらには,遺伝の問題も無視することはできない。その他,その地域社会における文化的特徴も見逃しえない重要な因子である。1人の精神障害者が発生しても,1つの社会精神医学的な事件が出現しても,その背景はきわめて複雑である。
ここで,母子関係と精神障害とのかかわり合いを各側面から深く追究する余裕はないし,筆者自身にもその能力はないが,きわめて日本的特徴をもつ「母子心中」をとおして,母子関係のあり方が,その発生にどう関与しているかについて,若干の社会精神医学的考察を加えてみたいと思う。
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