Japanese
English
研究と報告
母子心中を企てたfolie à deuxの背景と経過について
On the Backgrounds and the Course of the Folie a Deux with the Mother-Child Double Suicide
鈴木 康譯
1
,
星野 良一
1
,
藍澤 鎮雄
1
,
大原 健士郎
1
Yasunobu Suzuki
1
,
Ryoichi Hoshino
1
,
Shizuo Aizawa
1
,
Kenshiro Ohara
1
1浜松医科大学精神神経科教室
1Department of Psychiatry and Neurology, Hamamatsu University School of Medicine
キーワード:
Folie à deux
,
Psychosis of association
,
Mother-child double suicide
Keyword:
Folie à deux
,
Psychosis of association
,
Mother-child double suicide
pp.561-568
発行日 1981年6月15日
Published Date 1981/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203266
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抄録 母親(57歳)・息子(26歳)の間でみられたfolie à deuxについて,心理学的背景とその経過を中心に,臨床精神医学的な考察をおこなった。発端者は息子であり,劣位者であるはずの息子から優位者である母親に妄想が伝播しており,西田の『二重の結合』があてはまる。息子の妄想発症には,わずかな刺激で動揺する感情面の未熟さ・敏感さが関係しており,心因反応性に生じている。継発者の母親において妄想が強固であるが,①思考の発展性や可塑性が十分といえず細かいことに拘泥しやすいこと,②主観性の高いこと,③内的洞察力の不足,等といった心理状況が大きく左右していると思われる。従来folie à deuxの心理機制として,同情と共感・被暗示性などが言われているが,上記の事実も無視できない。なお,本症例では,経過中に母子心中未遂がみられているが,それがfolie à deux解体の動因となっていることも注目される。
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