Japanese
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特集 精神障害と家族
青年期における主体の硬直的な退去とその現代的背景—不登校,いわゆる学生のApathieを中心に
Rigid Withdrawal in Adolescence and its Background
辻 悟
1
Satoru Tsuji
1
1大阪大学医学部精神神経科
1Dept. of Neuro-Psychiatry, Osaka Univ. School of Medicine
pp.1279-1289
発行日 1973年12月15日
Published Date 1973/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202114
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I.問題の定位
学園における学生を中心とした批判・告発の活動が,社会的な現象として表面化する以前に,大体昭和38年度大学入学の世代から,留年率が飛躍的に増加する現象が見られた。いわゆる大学における大量留年といわれた現象である。筆者17)は,先にこれら留年学生に見られる特徴が,それに先立って問題となっていた中・高校生に見られる不登校と,その本質は同じものとしてとらえるべきものであること,およびこれらの現象が,教育ならびに精神医学の領域,さらには社会現象として目立つようになった世代は,世代として一致しており,主として敗戦後に生をうけ,戦後のいわゆる経済成長という社会情勢の中で,自己形成の場を持つようになった世代層であることを指摘した。
不登校症例は,学校恐怖症,登校拒否症例などとも呼ばれ,その特徴や分類,成因などについての報告がかなりの数になってきている。一方,大学においては,その後に生じた上述の学園の混乱によって,大量留年をここで問題にしている現象の現われとして直線的にとらえることができなくなった。しかしそれによって問題が消失したのではなく,大学生にみられる学校恐怖症とか,大学生のApathieなどとして問題にされてきており,さらに世代の年齢的な進行とともに,職域においても同じような問題が生じてきていることに,人人は気づくようになってきている。
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