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内因性精神病について,われわれが目をみはることの一つは,罪業妄想・宇宙妄想・使命妄想・恩寵妄想・救世主との同一化妄想などにおいて,日常的な世界の変化のみならず,すでに聖なる領域にまで及ぶ病者の世界全体が変化しているという事実である。K. Schneiderは《宗教精神病理学入門》(Zur Einführung in die Religionspsychopathologie,1928)のなかでこうした症例をたくさんあげている。Weitbrechtは伝統的な精神医学の立場を守りながら,症例を生活史的に深く掘りさげ,世界と人格と精神病との関連を考察した(Beitrage zur Religionspsychologie,1948)。またA. Storchは宇宙や聖なる世界に及ぶ分裂病者の精神生活について,発達心理学や民族心理学の立場から解釈した(Das archaisch-perimitive Erleben und Denken der Schizophrenen,1922)。さらにv. Baeyerは罪という限定されたテーマであるが,内因性精神病における罪の問題(Ein Fall von schizophrenem Schuldwahn. In:Psychopathologie heute,1962)を論じた。しかしこれらの論文をのぞけば,内因性精神病の宗教問題ととりくんだ論文はきわめて少ない。これは,神経症に関する精神療法学的研究が,神学との境界領域を顧慮してきたのとまつたく対照的である。S. FreudやC. G. Jungの宗教心理学的著作は,心理学が神学領域にはいりこむ契機となったが,Gebsattelの人間学的基礎に立つ精神療法学も,神経症について,超越世界との関連が決定的な重要性を占めることを論じたものであり,これに匹敵するような,つまり内因性精神病の発展の一根源として宗教問題を論じた確固たる視点はまだ発見されていないようである。
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