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特集 宗教と精神医学
第63回日本精神神経学会総会シンポジウ厶
宗教精神病理学の方法論的考察
Some Comments on the Method of Religionspsychopathology
小西 輝夫
1,2
T. Konishi
1,2
1松下電器健康管理本部
2松下病院神経科
1Dept. of Neuropsychiat., Matsushita Health Service Center
2Matsushita Hosp.
pp.913-917
発行日 1966年11月15日
Published Date 1966/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201096
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I.序言—精神医学者の宗教観
宗教という人間にのみ認められる精神のいとなみについて,精神医学がその意味を問うことはけつして無意義ではない。事実,多くの精神医学者が宗教に関心を示している。しかしその関心の示しかたにはいろいろの問題が含まれているようである。
ドイツ語圏における両者の交渉の歴史8)を例にとつてみると,まず精神異常を宗教的原理で説明しようとしたHeinrothの非医学的方法は論外としても,宗教現象を科学的学説に解消せしめようとしたFreudの科学万能論は,宗教を「集団ヒステリー」ときめつけるという天才らしからぬ粗雑な理解に終つている。ついで,宗教に対する認識方法としての自然科学的方法の妥当性を吟味するあまり,宗教は精神医学の対象でないとしたJaspersの潔癖な主張も問題を回避した感がある。そして最近にいたり,宗教的人間の行為と病態を,人間存在の全体的関連において統一的に理解しようとするHeimanらの人間学的方法を得て,やつと妥当な方向が示されたといえるが,このような学説の変遷が宗教といえば即キリスト教(有神論)である西欧的思想風土のもとでの提議であることを,われわれ東洋の精神科医としては,一応心にとどめておく必要があると思う。というのは,東洋には仏教という無神論宗教があるからである。
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